野球の勝ち投手の権利と条件とは?【公式戦、オープン戦、オールスターの勝ち投手についても解説】

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【完全保存版】勝ち投手の権利と負け投手の条件とは?例題を出して分かりやすく解説

悩んでいる人
  • 勝ち投手の権利、条件が知りたい
  • 負け投手の権利、条件が知りたい

このような悩みを解決していきます。

本記事を読むと、どんな時に勝ち投手の権利がつくのか分かります。

勝ち投手に関するさまざまな記録や問題点も、合わせて紹介します。

また敗戦投手を決める基準や注意点も分かります。

勝ち投手の条件は、「5回まで投げて勝ち投手」、「決勝点の前に投げていた投手」だけではありません。少し複雑ですが、その他の勝ち投手の条件も分かりやすく説明していきます。

記事の前半は勝利投手について、後半は敗戦投手について解説します。

それでは本題に入っていきましょう。

勝ち投手の条件とは(ルールブックの解釈)

勝ち投手の権利と条件とは?

そもそも勝ち投手が、どのように決まるのか説明します。
公認野球規則9.17には、下記のように記されています。

ある投手の任務中、あるいは代打者または代走者と代わって退いた回に、自チームがリードを奪い、しかもそのリードが最後まで保たれた場合、その投手に勝投手の記録が与えられる。

引用 公認野球規則

分かりやすく言うと

決勝点が入った時、前の回に投げていた投手が「勝ち投手」となります。

先行なら直前の回(裏)
後攻なら表の回が終わった時です。
勝ちチームに、必ず勝ち投手がいます。

これが基本になります。

分かりづらい場合は、後ほど例で説明します。

勝利投手は、その試合の勝利に最も貢献した投手1名に記録されます。基本は先発投手に多く記録され、先発投手の評価基準になっています。

選手目線では、どんな状況であれ勝ち投手にこだわってプレーしています。

基本をふまえた上で、先発投手、救援投手(中継ぎ、抑え)の勝ちについてみていきます。

先発投手の勝ちの権利と条件

先発投手が勝ちの権利を得るためには、どんな条件が必要なのか説明していきます。

公認野球規則9.17には、以下のように記載されています。

先発投手は、次の回数を完了しなければ勝投手の記録は与えられない。
(1)勝チームの守備が6回以上の試合では5回。
(2)勝チームの守備が5回(6回未満)の試合では4回。

引用 公認野球規則

分かりやすく、まとめると

①9回で終了(通常の試合)→5回投げ切ると、勝ち投手の権利
②6回未満で終了(降雨等)→4回まで投げ切ると、勝ち投手の権利

①9回で試合終了

通常の試合です。
プロ野球は通常9回まで行われるので、先発投手が5回まで投げていると勝ち投手の権利が得られます。

②6回未満で試合が終了

雨等によりどちらかのチームが勝っていて、試合が6回未満で終了する場合です。
このような時は、4回まで投げると勝ち投手の権利を得ることができます。

このように、5回未満でも勝ち投手になることもあります。

※このケースは過去に、10例ほどあり後で紹介します。

先発投手に勝ちがつかないケース

試合終盤で中継ぎ投手が打たれ、解説が「〇〇投手の勝ちの権利がなくなりました」というコメントです。

例で見ていきます。

スコア表

Jチームの先発投手が、6回まで投げ勝ち投手の権利を得て降板したとします。

しかし7回に2番手投手が、3失点で同点。
この時点で先発投手の勝ちの権利がなくなります。

このように同点や逆転された時は、勝ち投手の権利がなくなります。

ちなみに常にリードがある場合は、勝ち投手の権利は消えません。例えば、3-0の場面で降板。試合終了時のスコアが5-3でも、試合中に3-3のような場面がなければ、勝ち投手の権利は消えません。

救援投手の勝ちの権利と条件

次に救援投手の勝ちの権利です。
先発投手より少し複雑です。

基本として先発投手に勝ちがつかなかった時に、救援投手に勝ちがつきます。

これは勝ちチームに必ず勝ち投手がいるので、分かりますよね。

試合パターンによって変わります。

  1. 同点や逆転等のシーソーゲーム(点の取り合い)
  2. 常にリードしている試合で、先発が5回未満で降板

詳しくみていきます。

①同点や逆転等のシーソーゲーム(点の取り合い)

点の取り合いのシーソーゲームを想像してください。

勝ち越した直前に投げていた投手が、勝ち投手です

例で、説明します。

スコア表
 失点 
投手A63 
投手B10H
投手C10
投手D10S

上記の例ですと、9回に勝ち越し点が入っているので、直前の8回に登板した投手Cが勝ち投手になります。

仮に投手Cが1球しか投げていなくても、勝ちがつきます。
「1球で勝ち投手」のようなニュースがたまにありますね。

ちなみに投手Bにホールド、投手Dにセーブがつきます。

セーブとホールドの条件も複雑でして、詳しく知りたい方は【完全保存版】ホールド・セーブについて例題で分かりやすく解説をご覧ください。

②常にリードしている試合で、先発が5回未満で降板

ちょっと複雑です。
チームは早い回に先制して、先発投手が5回未満で降板します。そのまま同点や逆転を許さない場合で試合が終了した場合です。

結論からいうと、公式記録員が勝ち投手を決めます。

スコア表2
 失点
投手A33
投手B10
投手C21
投手D21
投手E10

試合はJチームが常にリードしています。

まず先発投手Aは3回で降板しているので、勝ち投手の権利がありません。すでにリードしているので、中継ぎ投手の誰に勝ちを付けていいのか分かりません。

この場合、公式記録員の印象で決まります。

なぜこのようになるのか説明します。

公認野球規則9.17では、以下のように記載されています。

救援投手が1人であればその投手に、2人以上の救援投手が出場したのであれば、勝利をもたらすのに最も効果的な投球を行ったと記録員が判断した1人の救援投手に、勝投手の権利を与える。

引用 公認野球規則

つまり

救援投手が1人→その投手
救援投手が2人以上→公式記録員が勝ち投手を決める

「公式記録員が、勝ち投手を決めるは」「ちょっと・・・」となりますよね。ですがこのようになっています。

公式記録員の印象ですが、ある程度の基準が決まっています。

公式記録員が勝ちを決める基準
優先度は、上から順。

  1. 投球回数
  2. 失点、自責点、得点させた走者、試合の流れ、登板時の状況
  3. 全て同じなら先に投げている投手

このようになっていて、記録員の印象で勝ち投手が決まります。

例でいくと投手CかDの可能性が高い。
※試合内容によって変わります。

印象ってどうなんでしょう?
エラーも同じですが・・・。

オープナー、ブルペンデーの勝ち投手の権利と条件

はやりのオープナーやブルペンデーも、上記のような基準で勝ち投手が決まることも。

まずは、勝ち越した回の直前に投げた投手と投げた回数をみると、勝ち投手が分かるかもしれません。

オープン戦、オールスターの勝ち投手

オールスターやオープン戦については、勝ち投手の権利が変わります。

野球規則9.17(e)にこのように記載されています。

選手権試合でないオールスターゲームのような場合には、本条(b)は適用されない。このような試合の勝投手の記録は、勝ちチームが試合の最後までリードを保ったときには、そのリードを奪った当時投球していた投手(先発あるいは救援)に与える。

引用 野球規則9.17(e)

まとめると

先発、救援の区別はなく、1回だろうが1球だろうが、勝ち越し点の直前に登板した投手に勝ちがつきます。

次は、「勝ち」について掘り下げてみます。

【問題点】勝利投手がおかしいと言われる理由

主な問題点をあげると

  • 1球or0球で勝ち
  • 100球投げても負け
  • 10点とられても勝ち
  • 1点とられても負け

のように、公平性に欠ける点です。
全て可能性があり、実際に起こっています。

勝ち数は、野球を楽しむ目安でありますが、「1勝の価値」は、一つずつ違います。

「1球で勝ち」と、「100球で勝ち」は違いますよね?
「1球で満塁をおさえた勝ち」と、「1球で走者なしをおさえた勝ち」は違いますよね?

数字だけ追いかけていると、数字に隠された本当の価値が分かりません。

ある意味では、味方の得点力によって左右する成績とも言えます。

セイバーメトリクスでは、こういった理由で「勝ち」に対して全く評価されていません。

ですから勝ちよりもクオリティースタートや投球回を重視するようになりつつあります。

セイバーメトリクスの詳しい説明については»【初心者でも分かりやすい】セイバーメトリクス用語集をご覧ください。

ただ選手目線で見れば、どんな内容であれ勝ちがつくことに対して、嬉しいはずです。

また公式記録員が、勝ちを誰に付けていいのか迷っている姿を想像すると、大変な仕事だなと思ったりもします。

「気持ちとデータ」「選手と記録員」いろいろな視点から見れば、違った野球の楽しみ方ができるかも。

ここからは勝ちに関する記録をみていきます。

勝ち投手に関する記録

勝ち投手に関する記録

勝ち投手に関するランキングを紹介します。
NPBのURLをはっておくので、気になる方は確認してみてください。

»勝利数【通算記録】
»通算勝利数【現役選手のみ】
»勝利数【シーズン記録】

連勝記録ランキング【通算】

連続勝利は、敗戦投手にならない限り中断されない。間にセーブや引き分け、勝敗無しが入っても継続される。

先発投手【5イニング未満で勝利投手】

6回未満(降雨コールド等)で中止になったケースです。

  • 藤村 富美男(1951年10月7日、大洋戦)
  • 清水 宏員(1952年9月23日、大映戦)
  • 北原 啓(1954年7月21年、東映戦)
  • 阿部 八郎(1954年8月11日、南海戦)
  • 杉本 正(1981年8月22日、南海戦)
  • 柴田 保光(1982年10月2日、日本ハム戦)
  • 田之上 慶三郎(1997年10月4日、西武戦)
  • 川越 英隆(2000年5月9日、近鉄戦)
  • 関根 裕之(2000年8月22日、オリックス戦)
  • アリエル・ミランダ(2019年5月19日、日本ハム戦)

対戦打者0の勝利投手

牽制などでランナーをアウトにすれば、1球も投げずにアウトを取る事が可能です。

ノーアウト満塁で登板したら、牽制だけで3アウトの可能性もあります。

実際に過去2回あります。

  • 小林 雅英(2000年7月2日、オリックス戦)
  • 久古 健太郎(2014年5月3日、阪神戦)

理由はそれぞれ、盗塁死と牽制死によるものです。

0球で勝ち投手になる例

牽制などでアウトにすると、1球も投げずに勝利投手になることが可能です。

また申告敬遠ができたので、申告敬遠後そのランナーを牽制でアウトにすると、0球で勝利投手になることも可能です。

※牽制球は投球数にカウントされません。

ここからは、敗戦投手について解説します。

敗戦投手(負け投手)とは

敗戦(負け)投手の条件

敗戦投手は、野球の試合で負けたチームの責任投手のことです。その投手が失点したことで試合に負けたということになります。

このことからも、投手がいかに重要な役割か分かります。
また負けたチームに必ず一人「負け」のつく投手がいます。

公認野球規則(野球のルールブック)の解釈

そもそも敗戦投手(負け投手)がどのように決まるのか、説明します。

公認野球規則9.17(d)には、以下のように記載されています。

自己の責任による失点が相手チームにリードを許し、相手チームが最後までそのリードを保ったとき、その投手に敗投手の記録を与える。

【原注】試合の途中どこででも同点になれば、敗投手の決定に関しては、そのときから新たに試合が始まったものとして扱う。

引用 公認野球規則

分かりやすく言うと

投げたイニングは関係なく、決勝点を許した投手が敗戦投手となります。

また試合途中に味方が追いつくと、敗戦投手の権利が消えます。1度リセットされ、そこから試合が始まったものとなります。

同点に追いつくのが大切で、スコア0-3で負けているときに降板したとします。

トータルスコアが3-5でも、3-3のように同点に追いついた場面がないと、敗戦投手の権利は消えません。

このように考えると、「その投手が原因で試合に負けたのか疑問?」ですが、ルール上このようになっています。

敗戦投手の条件を例題で分かりやすく解説

敗戦投手の条件を例題で分かりやすく解説

ケースごとに説明します。

同点に追いつくことなく負けた場合

初回に点をとられ、同点に追いつくことなく負けた場合は、先発投手に負けがつきます。

分かりやすいですね。

投手が1回を投げている場合(一般的な試合)

以下のような試合があったとします。

投手が1回を投げている場合(一般的な試合)

Sチームの投手成績

 失点 
投手A53 
投手B10 
投手C10H
投手D22

負けがつくのは、8回に決勝点をあたえたD投手になります。

負け投手の権利を見ていくと、先制されて、勝ち越し、逆転されているので以下のようになります。

投手A→投手D

ちなみに投手Cにはホールドがつきます。

ホールドの付く条件も複雑で »野球のホールドとは?【意味や条件、ランキングを紹介】詳しく解説しています。

ここまでは、何となく分かると思います。

上記の試合のように、1回を1人の投手が投げていると、分かりやすいです。

次は、少し複雑です。

1回を複数の投手が投げている場合

失点はその投手の登板中だけにつくわけではありません。

例えば決勝点を与えた回に、複数の投手が投げている場合です。

スコアの投手覧に、1/3や1アウトとなっているとき。
1アウトや2アウトのみで投手交代とか、よく見ると思います。

この時は、状況によって負け投手が変わります。

【1点差で勝っている場面】
・投手Aがランナーをだして降板
・リリーフした投手Bが2ラン

負け投手はB

投手Aは同点のランナーまでの責任です。
決勝点を与えたのは、投手Bです。

したがって負け投手はBになります。

【同点の場面】
・投手Aがランナーをだして降板
・リリーフした投手Bがタイムリー、またはホームラン

負け投手はA

決勝点を与えたランナーを出したのは、投手Aです。
したがって負け投手は、Aになります。

点数やランナーの状況によって負け投手が変わります。
「決勝点の原因(ランナーの出塁等)は誰が作ったのか?」を考えると分かりやすいです。

自責点と決勝点の考え方になるので、詳しく知りたい方は、»野球の自責点とは?【基本から難しいルールまで例をだして説明】をご覧ください。

オープナーやブルペンデー

オープナー、ブルペンデーについても同様で、投球回に関係なく、決勝点を与えた投手に負けがつきます。

ここからは敗戦投手(負け投手)にまつわる、レアなケースをみていきます。

1球で敗戦(負け)投手

同点の場面で登板。初球にホームランを打たれて降板すると、1球で負け投手になります。

プロ野球では、過去25人いる。
森浩二(オリックス)投手は、1球敗戦を2度記録。

話はそれますが、杉谷拳士選手(日本ハム)も高校時代、2006年の甲子園で1球敗戦投手になっています。

0球で敗戦(負け)投手

今のところいませんが、可能性はあります。

リリーフで登板。1球も投げず、申告敬遠をして降板。次の投手が打たれ、そのランナーが決勝点になると、投球数0で敗戦投手になります。

申告敬遠ができたので、0球でも敗戦投手になることがあります。

敗戦処理投手の役割

「敗戦処理」という言葉が野球の投手にはあり、あまりよくないように感じますが、重要な役割があります。

大差の負け試合で投げる、敗戦処理投手については»敗戦処理投手の役割4選と重要性とは?で詳しく解説しています。

ここからは、敗戦投手に関する記録(ランキング)を紹介します。

【まとめ】敗戦投手の条件と勝ち投手の権利とは

負け投手の権利についてまとめると

投げたイニングは、関係なく決勝点を許した投手が、敗戦投手となります。また試合途中に味方が追いつくと、敗戦投手の権利が消えます。

決勝点を与えた回に複数の投手が投げている場合は、決勝点のランナーを出した投手に負けがつく。

勝ち投手の条件

勝ち投手に関する基本的な考え方

  • 先発投手なら5回以上投げ、リードしている(1度も追いつかれていない)
  • 救援投手なら、決勝点をあげた直前に投げていた投手

これ以外の時は、公式記録員が決めます。

問題点もありますが、観戦する際の参考になればと思います。

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