- 野球のポスティングが、複雑で分かりません。資格や条件が知りたい
- 認めない球団と認める球団の違いは何ですか?
このような疑問を解決します。
本記事を読むと、ポスティングの概要(ルールや資格、条件)、ポスティングの問題点が分かる内容になっています。なるべく分かりやすく、解説します。
ちなみに過去3回ルールが変わっているので、分かりづらくなっています。この記事では、現在の制度(2018年以降~2021年)だけ説明します。
それではさっそく本題に入ります。
野球のポスティングとは
ポスティングとは海外FA権を持たない選手が、MLB(メジャーリーグ)に移籍する際に利用する「選手のオークション」のようなものです。
MLB移籍を希望する選手の球団が、MLBに申請。
MLBの球団と選手が交渉し、交渉がまとまれば入団できる制度です。
申請は選手が行うのではなく球団が行います。
交渉がまとまった場合のみMLB球団から、NPB球団に譲渡金が支払われます。
野茂英雄が活躍した1990年代前半はFA以外の移籍方法がなく、ルールの抜け道を使って移籍したことから、本格的に整備された制度です。
初めてポスティングを利用したのは、伊良部秀樹になります。
FAって何?という方は»プロ野球のFAとは?をご覧ください。
ポスティングの流れ
ポスティングの流れは、以下のようになっています。
大まかな流れが分かったところで、もう少し詳しくみていきましょう。
①選手と球団の合意
選手と球団が合意しないと、移籍することができません。
選手が「メジャーに移籍したい」と思っても、球団の了承がないと移籍できません。
②球団による手続き
球団がMLBに申請を行います。
毎年11月1日~12月5日までが、申請期間になります。
2020年は、11月8日~12月12日になっています。
③選手とMLB球団による交渉
所属球団が告知手続きを行った翌日から、30日間が交渉期限になります。
以前は、1球団としか交渉できませんでしたが、現在は交渉の意思がある全ての球団と交渉可能です。
2020年に申請した選手のスケジュールは、後ほど説明します。
④契約合意と移籍手続き
選手とMLB球団で契約(年俸、出来高)に合意がされた場合は、移籍が成立します。
移籍成立後、譲渡金が支払われます。
※ちなみに交渉が失敗に終わった場合は、譲渡金は支払われず翌年の11月1日までポスティングの再申請はできません。
契約にもよるが、選手は所属球団と再交渉します。
譲渡金とは
現在の制度は、以下のとおりです。
【譲渡金】
譲渡金とは契約に合意すると、MLB球団から選手の所属球団に支払われる、お金のことです。
契約が成立した場合のみ、譲渡金が発生します。
譲渡金の決定方法
譲渡金は、契約金の額によって決まります。
詳細は、以下のとおりです。
- 契約金総額のうち、2500万ドル(28億円)以下はその金額の20%
- 契約金総額のうち、2500万~5000万ドルはその金額の17.5%
- 契約金総額のうち、5000万ドル以上はその金額の15%
上記プラス
- 出来高契約については、獲得した出来高の15%を追加で支払い
- マイナー契約の場合は、契約金の25%
【譲渡金の支払い方法】
・契約確認~14日以内に50%
・12か月後に25%
・18か月後に25%
出来高については、毎年オフに支払う。
上記のようになっていますが、難しいので2019年の筒香選手の譲渡金を例にみていきましょう。
筒香選手の譲渡金
【筒香選手の契約】
2年総額1200万ドル(約13億2000万円)
①の総額20%に該当するため、1200×0.2=240
横浜に240万ドル(2億6400万円)が支払われます。
出来高については、不明です。
資格や条件
唯一の条件は、所属球団の了解を得ることです。
資格や年齢について条件はありませんが、MLB側の規定により海外移籍選手は、在籍6年以上かつ25歳以上の選手でなければ、メジャー契約はできません(マイナー契約は可能)。
契約金も低く抑えないと、ペナルティーがあります。
このルールにより大谷選手は、マイナー契約後、メジャー契約となったので、破格の213万ドル(2.5億円)で移籍となりました。
球団の考え方(認めない球団とは?)
ポスティングに関しては、球団によって考え方が変わります。
それぞれの球団の考え方を説明します。
※実際の事実と異なる部分もあるかもです。
ポスティングを認める球団
ソフトバンク以外の球団は、ポスティングを認める方針になったようです。
巨人もポスティングを認めていませんでしたが、2019年に山口選手がポスティングを利用してメジャーに移籍しました。
現在は、ポスティングシステムを認めています。
認めた理由として、FAでの移籍となると球団に金銭が1円も入りません。
ポスティングの場合は、譲渡金として球団に金銭が入りますから、海外FA権取得(9年)の前にポスティングを利用して、少しでも金銭をもらおうという戦略のようです。
ただ入団3~6年目の選手でポスティングを認めてもらえるかは、その選手、球団の考え方によって変わってくると思われます。
ポスティングを認めない球団
ソフトバンク
ソフトバンクは、2020年現在もポスティングを認めていません。
理由として孫オーナーや球団社長が、以下のように話しています。
※筆者の主観も若干入ります。
- 「世界一の球団」を目指しているから、メジャーに移籍したらライバルになってしまう
- 長い期間、ホークスでプレーしてほしい
- ポスティングは、球団の金もうけにつながるから
- メジャーにいきたいなら、FA権を取得してから移籍してほしい
以上のような理由でソフトバンクは、ポスティングによる移籍を認めていません。
球団設備(iPod、iPhoneの無償配布、球場やトレーニング施設、その他環境)も優れているので、選手がポスティングしたがらないといった理由もありそうです。
※ここに関してはかなり推測もあるので、参考程度にしてください。
実際千賀投手は、「かなりメジャー思考が強い」みたいな報道もありますね。
問題点
ポスティングについては以下のような問題点があります。
- 球団が認めないと、ポスティングを利用できない
- 海外FA権の取得が9年と長い
- 譲渡金の上限が2000万ドルに決められている
詳しくみていきましょう
球団が認めないと、ポスティングを利用できない
現在の制度では、球団が認めないとポスティングを利用することができません。
仮に入団3、4年目で圧倒的な成績を残して、メジャーに移籍したい選手がいたとします。
このような選手でも球団が認めなければ、ポスティングを利用することができません。
だからといって、このような選手のポスティング利用を認めてしまうと、スーパースターが日本球界からいなくなるといった、空洞化につながる可能性もあります。
ですので選手、球団、ファンそれぞれの視点に立つと、なかなか難しい問題です。
海外FA権の取得が9年と長い
海外FA権の取得年数が9年と時間がかかり、高卒プロでも最短27歳(※最短取得は、なかなかいない)です。
なのでポスティングも7、8年目あたりに申請されるのが一般的になってきました。
選手としてのピークを30歳前後と考えると、「全盛期をメジャーで過ごす」と考えた場合、少し長い気がします。
大卒選手の場合は、ピークを過ぎてからの移籍で活躍できず終わる、といったイメージもあります。
全盛期の選手が、メジャーで活躍している姿をみたいですね。
譲渡金の上限が2000万ドルに決められている
現在の制度で上限が決められているか、不明です。
ですので仮の話になりますが、契約金が高い場合は、日本球団が損をする制度になっています。
契約金によって譲渡金が決まるわけですから、譲渡金の上限は、必要ないのではと思っています。
ただ現行の制度で2000万ドルを超えるのは、1億2000万ドル、(約132億円)を超える契約金が必要です。
2020年のポスティングシステム申請選手
2020年のポスティング申請選手は、以下の3人です。
- 有原航平(日本ハム):11月26日に申請→12月27日まで交渉可能
- 西川遥輝(日本ハム):12月2日申請→1月3日まで交渉可能
- 菅野智之(巨人):12月7日申請→1月8日まで交渉可能
※澤村拓一投手は、海外FA権により移籍。
最大の注目は、何といっても日本のエース菅野智之のポスティング申請ではないでしょうか?
どのような結末をみせるのか注目ですね。
その他、西川選手のようなタイプの選手は、ポスティング申請した例が少ないので注目ですね。
追記 有原選手がレンジャーズと契約が成立。西川選手は、契約に至りませんでした。菅野投手も残留でした。
契約内容
【有原航平】
- 2021年の年俸は260万ドル
- 2022年の年俸は360万ドル
- 出来高は、年5万ドル
ファイターズに払われる譲渡金は、124万ドルです。
【西川遥輝】
契約合意に至らず、日本ハムと再交渉を行うとみられます。日本ハムと契約。
【菅野智之】
契約に至らず、巨人に残留しました。
2020年のポスティングの注目ポイント
JSPORTSのユーチューブチャンネルで、AKI猪瀬氏が以下のように話していました。
昨年の秋山選手、筒香選手はウインターミーティングに合わせて、渡米し交渉。監督やGMと直接、話をしていたが今年はコロナの影響で、できない。
しかし全ての選手が日本人をクライアントに持つ代理人と契約したので、どんな条件で契約(年俸、出来高)するといいのか分かっているのではないか。この状態でも心配はない。
以上のように話していました。
今後に注目ですね。
ポスティングの入札額歴代ランキング
ポスティングシステムの歴代入札記録をランキング形式にしました。
制度が3回変わっているので、単純な比較はできないですが、参考程度でまとめてみました。
※金額は当時のレートによります。
順位 | 選手名 | 入札金額 | 契約内容 |
---|---|---|---|
1 | ダルビッシュ有 | 5170万3411ドル(約38億7800万円) | 6年6000万ドル(約45億円) |
2 | 松坂大輔 | 5111万1111ドル(約60億) | 6年5200万ドル(約60億8400万円) |
3 | 井川慶 | 2600万194ドル(約30億円) | 5年2000万ドル(約23億円) |
4 | 前田健太 | 2000万ドル(約24億円) | 8年2500万ドル(30億円) |
5 | 田中将大 | 2000万ドル(約21億円) | 7年1億5500万ドル(163億円) |
天文学的数字で一般人には、よく分からない数字が並んでいます。
野球のポスティングを知ってオフも楽しもう
野球のオフを楽しむためには、FAとポスティングが分かるとより楽しめます。
本記事が参考になったらと思います。
FAについては»プロ野球のFA概要をご覧ください。
またその他の野球に関する用語については【保存版】野球初心者にもわかりやすい野球用語一覧でまとめています。