本記事で分かること
- 敗戦処理投手の役割と意味
- 敗戦処理投手の気持ち
- 敗戦処理投手で有名な投手
- 野手が登板した例
まず結論ですが、敗戦処理投手は大切な役割があります。
なぜ大切なのか、詳しく説明していきます。
本記事を読むことによって
敗戦処理投手はどんな役割があって、なぜ重要なのか?
敗戦処理投手の気持ちや選手のエピソード、野手で登板した選手も合わせて紹介します。
それではさっそく、本題に入っていきましょう。
敗戦処理投手とは
負けている大差の試合で投げる投手を、敗戦処理投手と呼びます。
敗戦処理投手は、英語で「mop up man」モップアップマンまたは「mop up pitcher」モップアップピッチャー
"mop"は掃除で使うモップです。
そして"mop up"はモップを使って「ふき取る」や「仕事を完了させる」というような意味です。
後始末をする清掃員のイメージです。
主力級の中継ぎ投手や抑え投手を温存するために、若手投手や間隔の空いている投手、ベテラン投手を調整のため登板させることです。
「らくそう」という声を聞きますが、敗戦処理投手には重要な役割があります。
敗戦投手処理投手は重要
千葉ロッテマリーンズの吉井投手コーチも、以前のインタビューで以下のように話していました。
「【敗戦処理】って書かれてしまうけれども、けっこう重要な役目。あそこを誰かがやらなければいけない。1試合の中でもそうなんですが、長いシーズンを考えると、ブルペン陣、特にシーズン後半の疲労を考えると、あのポジションの投手が絶対必要になる」と指摘。
そして「【すごい敗戦処理】もブルペンの中では、重要なピースだということをわかってもらいたい」と重要性を説いた。
このように話しています。
もう少し深堀りします。
敗戦投手処理投手の役割4選
敗戦処理といっても、いろいろな役割や状況があります。
- 試合を消化させる(成立させる)
- 主力投手(先発、中継ぎ)の疲労を軽減させる
- 1軍昇格直後なら、テスト登板
- 調整登板
詳しくみていきます。
①試合を消化させる(成立させる)
見ていて残念になりますが、長いシーズンでは大差の試合がどうしてもあります。
そんな試合の時に「あきらめました。7回で試合をやめます」とは、できないですよね。「お金返せー」と暴動が起きそうです。
使いたい投手がいなかったら、野手を登板させたいわけですが、冒頭の通り賛否ありました。
そこで試合を成立させるために、敗戦処理投手が必要です。
何となく、試合をまとめてくれる投手。大差なのにもっと点を取られたら、ファンが怒ってしまいます。
序盤だったら、「勝ちパターンの投手は使いたくないけど、点数が離れないであわよくば追いつけるかも」と思わせるような投球が必要です。
②主力投手を(先発、中継ぎ)の疲労を軽減させる
①と似ていますが、投手の肩は消耗品です。
「投手は、休みながら投げましょう」というのが常識になってきました。
どんなにいい中継ぎ投手でも、毎日投げられません。ですので大差で負けているときは、言い方は悪いが、「ショボい投手で、主力を休めよう」となるわけです。
ただ主力投手を休養させるためには、重要な選手です。
③1軍昇格直後なら、テスト登板
1軍初昇格や久しぶりの1軍となれば、監督としても、いきなり1-1の場面で投げさせるのは勇気がいります。
監督、選手どちらからみても「まずは1軍に慣れる」のほうが大切です。
敗戦の責任もありませんし、のびのびと投げることができます。実際は、どうなのか分かりませんが。
大差の場面で使ってみて、好投したら「接戦で使ってみよう」となるわけです。
④調整登板
主力投手がケガから復帰した時や、中継ぎ投手の登板間隔があいているので、「慣らし」で「1イニング投げてみよう」ということです。
もともと実力のある投手が投げるわけですから、結果は求められません。
結果よりも投球の感覚を確認したり、登板間隔を空けすぎないようにする役目があります。
敗戦処理投手は重要
一言で敗戦処理といっても、いろいろな状況があります。
4点を見てきましたが、長いシーズンで優勝を目指すためには、敗戦処理投手も重要となりませんか?
誰かがやらなければいけないポジションで、進んで志願する投手はいないと思います。しかし与えられたポジションで結果を残すのが、プロの仕事です。
たとえ大量点をとられても、イニングを消化するという目標であれば、点数は関係なくイニングを消化させたことに価値があります。
野手の登板については、賛否が分かれていますが、投手を休ませるために必要と思っています。
ちなみに敗戦処理だけでなくリリーフ投手全般の役割もまとめています。
よかったら【必見】リリーフ投手(中継ぎ、抑え)の種類と役割とは?をご覧ください。
ここからは、敗戦処理投手の気持ちを考えてみます。
私自身、プロ野球選手ではないので、岩隈久志投手の»感情をコントロールする技術という本に敗戦処理投手について、興味深い内容が書かれていたので紹介します。
敗戦処理投手の気持ちやモチベーション
岩隈投手は、2012年メジャー1年目の前半、調子が上がらずロングマンと言われる敗戦処理を担当しました。
※ロングマンとは、試合前半で大差がついたときに投げる、敗戦処理投手のこと。
この時のことを、以下のように話しています。
ロングマンでいくと言われた時は、すぐに理解できず「何で俺が中継ぎなんだ」としばらくの間、納得出来なかった。
しかし気持ちを切り替えて、「未知のことから、いろいろと学んでやろう」と思ったそうです。
その後の活躍は、知っての通りで今年引退しました。
誰でも納得するのに時間は、かかります。
一流であればなおさらです。
しかし、状況を受け入れて、「結果を出すためにベストを尽くす」という選手がほとんどです。現に「敗戦処理だから、やる気ない」といった投手を見たことがありません。
いたらごめんなさい。
敗戦処理で有名な投手
失礼な見出しなので、先に謝っておきます。すいません。
ですが面白そうなので、調べてみました。
個人の感想なので、あしからず。
小宮山悟
正確なコントロールが武器の投手で「投げる精密機械」と呼ばれたこともあります。
現役生活の晩年である2005年、自ら敗戦処理をかって出て、チーム31年振りとなるリーグ優勝、日本一に貢献します。敗戦処理だけでなく緊迫した場面での登板など、あらゆる場面で登板しています。
この年以降は、自軍が大量リードされているロングリリーフが中心となりました。
このようなチーム起用にプライドから異を唱えるベテラン投手もいる中で、小宮山は自分の役目を淡々と担っていました。
高木京介
野球賭博問題で有名になってしまいましたが、育成契約から支配下登録、敗戦処理と着実に力をつけています。
デビューから164試合連続無敗記録を持つ。2018年までの成績をみると、6勝0敗27ホールド、1セーブです。かなりの数字と思いいきや
高木が登板した試合の多くはリードを許した展開のもので、敗戦処理としての登板が多くなっています。
1年目を除くと2018年までは、敗戦処理での登板のイメージが強かったが、2019年から数字が良くなっているので、敗戦処理としてのイメージは少なくなっているかもしれません。今後の活躍に期待です。
小松聖
もともとは、1995年のパ・リーグ新人王で第2回WBCの日本代表に選ばれるなど実力者でしたが、プロ野球では短命で終わった選手といえるかもしれません。
特に2012年から2013年にかけて敗戦処理として活躍しました。
2012年は12試合のロングリリーフで1勝3ホールド、防御率2.21と結果を残したが、9度の先発では2勝5敗、防御率6.14と結果を残せませんでした。
2013年は、敗戦処理としての登板が続き27試合で防御率4.35に終わりました。
敗戦処理として成功したわけではありませんが、一時代を築いた選手といえます。
真田裕貴
筆者の印象では、もうひと伸びできなかった投手です。
特に横浜時代の2009年は、敗戦処理からセットアッパーまでこなし、自己最多となる68試合に登板して防御率2.98、19ホールドと自己最高の成績を収めました。
この時代の横浜は、暗黒時代で万年最下位争いをしているチームにあって、登板数も多く頑張っていた中継ぎ投手の一人です。
敗戦処理投手もプロの技
共通することは、与えられたポジションで役割をはたしていることです。当たり前ではありますが。
特に小宮山投手は、敗戦処理でありながら日本一に貢献しています。勝ちや負けだけがチームへの貢献ではありません。
敗戦処理は、投球回ぐらいしか記録として残りません。
数字だけではない、野球の魅力です。
ちなみに敗戦処理だけでなくリリーフ投手全般の役割もまとめています。よかったら【必見】リリーフ投手(中継ぎ、抑え)の種類と役割とは?をご覧ください。
投手が投げた例だけではなく、野手が登板した例を調べてみました。
野手が登板した例
敗戦処理投手とは、限りません。
野手登録で登板した選手の一覧です。
敗戦処理とファンサービスで登板した選手は、増田、デストラーデ、五十嵐の3人かなと思っています。
間違っていたらすいません。
ちなみに五十嵐選手は、全ポジションで出場しています。
※大谷翔平は除く
選手名 | 所属球団 | 登板日 | 対戦相手 |
---|---|---|---|
増田 大輝 | 巨人 | 2020.8.6 | 阪神 |
五十嵐 章人 | オリックス | 2000.6.3 | 近鉄 |
ペルドモ | 広島 | 1999.6.27 | 巨人 |
嘉勢 敏弘 | オリックス | 1997.4.29 | ダイエー |
嘉勢 敏弘 | オリックス | 1997.4.18 | 日本ハム |
デストラーデ | 西武 | 1995.5.9 | オリックス |
長谷川 一夫 | クラウン | 1978.7.11 | 日本ハム |
大隅 正人 | 阪急 | 1977.7.31 | 日本ハム |
大隅 正人 | 阪急 | 1977.7.17 | 日本ハム |
高橋 博士 | 日本ハム | 1974.9.29 | 南海 |
スミス | 南海 | 1972.5.16 | 阪急 |
スミス | 南海 | 1972.5.3 | ロッテ |
広瀬 淑功 | 南海 | 1970.10.14 | 阪急 |
ニューク | 中日 | 1962.10.9 | 大洋 |
ルイス | 毎日 | 1954.4.8 | 南海 |
野草 義輝 | 巨人 | 1949.4.8 | 中日 |
千葉 茂 | 巨人 | 1946.7.25 | 阪神 |
呉波 | 巨人 | 1940.3.31 | 南海 |
【まとめ】敗戦処理投手
敗戦処理投手という言葉をみると、よくないですが、チームへの貢献を考えると大きいのではないかと思っています。
そして何気ない大差の試合にも、選手のドラマがあるということです。
大差になったから「帰る」「見るのをやめる」ではなく、普通の試合では無くなったからこそ、人間らしいドラマが見れるかもしれません。
リリーフ投手は他にもさまざまなポジションがあり役割があります。【必見】リリーフ投手(中継ぎ、抑え)の種類と役割とは?でリリーフ投手についてまとめているのでよかったらご覧ください。