本記事で分かること
- 野球のWARとは何か?なぜWARが大切なのか?
- WARの基準や算出方法
- 2020年のWARランキング、2019年のランキング、過去の名選手のWAR
- WARの問題点
以上の内容をそれぞれ解説します。
ネット情報、本、データを総合的にまとめて記事を作成しました。
この記事を読むと、野球におけるWARの概要、算出方法、大切な理由、問題点と分かります。
かんたに「野球のWARって何?」ってところから、難しい計算方法や過去のランキングの話もしますので、ぜひチェックしてみてください。
それではさっそく本題に入りましょう。
野球におけるWARとは?
WAR(Wins Above Replacement)の略。
ウィンズ アボーブ リプレイスメント
読み方は「ワー」、「ウォー」
「わら、わり(笑)」じゃないですよ(^^)/
読み方は、聞こえ方によって変わるので、完璧な正解はないですね。
セイバーメトリクスによる打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標です。
セイバーメトリクス(数値の指標)とは、その選手がチームの勝ちに対してどれだけ貢献したかを測る指標。
「勝ちに貢献」が大切で、従来の成績(打率や勝ち数)では「チームの勝ち」との関連が低いため、セイバーメトリクスが近年注目されています。
※セイバーメトリクスが分からないという方は「【保存版】セイバーメトリクス指標一覧【基本から分かりやすく解説】」をご覧ください。
WARをかんたんに説明すると、チームの控え選手に比べて、「1年間で何勝分貢献したのか」を測る指標です。
控え選手は、「2軍からすぐに昇格させたりできる」「年俸が最低水準の選手」のことをいいます。
数値が高ければ、優秀な選手ということです。
数値の目安は後ほど説明します。
【例】
「WARが+2」だと、その選手が出場すると「控え選手が出場するより、チームが2勝分多く勝てた」ということです。
ちなみに-(マイナス)も存在していて、マイナスになるとその選手が出場すると、2勝分の勝ちを逃したことになります。
WARの特徴と大切な理由
WARが大切な理由は、2点あります。
- 誰でもかんたんに、優秀な選手が分かる
- ポジションの違う選手を、比べることができる
詳しくみていきましょう
①誰でもかんたんに、優秀な選手が分かる
選手の優秀さが誰でも分かります。
仮に全く野球が分からない人でも、WARの数値を比べることによって、選手の能力を知ることができます。
また選手のチームへの本当の貢献度が分かります。
3割5分打った打者でも、守備面のマイナスが大きければWARの数字は低くなり、チームへの貢献度が低い選手とみなされます。
②ポジションの違う選手を、比べることができる
投手と野手は、従来の成績では同じ土俵で測ることは難しかったのですが、さまざまな要素(数値の補正)を追加することによって、WARで同時に評価できるようになりました。
「菅野と丸」や「千賀と柳田」のように、異なるポジションの選手を比べる事ができます
誰でもかんたんに、選手の能力が分かるようになりました。
WARの計算方法
WAR=攻撃指標+走塁指標+守備指標+投手指標
かんたんに言えば、全ての能力を数値化して足した数字ですね。
パワプロの能力値のイメージです。能力ごとに数値化して、その数字を全部足します。
数値の補正
全ての選手を比べるために、守備位置によって補正を行います。以下は、日本のデータ会社DELTAが公表しているポジションごとの補正値です。
例えば捕手として150試合に出場すると、+18.1点の補正が得られることになります。
守備位置 補正値
捕手 +18.1
一塁手 -14.1
二塁手 +3.4
三塁手 -4.8
遊撃手 +10.3
左翼手 -12.0
中堅手 +4.2
右翼手 -5.0
指名打者 -15.1
この他にも球場や走塁、打撃などあらゆる数値を補正します。
【例】具体的な計算方法
例えば打撃の評価では、wOBAという指標が使われ以下の計算式で求められます。
【wOBA】
wOBA = {0.69×(四球-敬遠)+0.73×死球+0.92×失策出塁+0.87×単打+1.29×二塁打+1.74×三塁打+2.07×本塁打}÷(打数 + 四球 – 敬遠 + 犠飛 + 死球)
マジ意味不明ですよね。
打撃だけでも、この他にいくつもあります。
またこのような算出方法ですが、実際の細かい算出方法が定義されているわけではありません。
数値もデータ会社や個人によって変わります。
したがって、こんな感じと思うぐらいでちょうどいいです。ここから先は相当な勉強と、知識が必要な分野になります。
細かい計算式は、WAR計算式をご覧ください。
ちなみに日本のデータ会社で有名なのは、DELTA、データスタジアム、Baseball Geeksの3社です。
他にも色々な数値がありますので、気になる方は「【保存版】セイバーメトリクス指標一覧【基本から分かりやすく解説】」をどうぞ
WARの基準(目安)
数値は、データ会社やサイトによって変わります。
目安として、覚えておくのがイイです。
ちなみにWARは、データ会社が公表している数値になります。
NPB(日本野球機構)の公式データはありません。
「数値が高ければよい選手」で、逆に低い選手は「貢献度が低い」ということになります。
WAR | |
MVP級 | 6.0 |
オールスター級 | 5.0 |
レギュラー級 | 2.0 |
代替レベル(控え)級 | 0 |
2軍クラス | 0未満 |
WARが2あれば、平均的なレギュラー野手、投手ということになります。
仮にWARが0ならその選手は「代替可能(控え)」なレベルになります。
マイナスの選手が出場していたら、WARからみると育成目的と言えそうです。
後程ランキングも紹介しますが「主力選手=WARが高い」ということで、ほぼ間違いありません。
WARは本当に正しいのか?問題点は?
いろいろ説明してきましたが、WARってほんとうに信頼できるの?
こういった質問に、答えていきたいと思います。
WARに関する論文をみつけたので、掲載しておきます。
”従来の評価指標との比較によるセイバーメトリクスの有効性に関する考察”
【要約】
チームの投手陣の平均WARと、野手のレギュラー選手の個人WARを合わせたものを合計したものをチーム全体のWARとし、勝利関係との相関関係を調べた。その結果0.92という相関関係を示した。1に近いほど相関関係があり、0に近いほど相関関係がない。
まとめると、チーム全体のWARが高いほど、勝利が多くなるというデータです。
また本でも説明されています。
分かりやすい本で、おすすめです。
以上のことからもWARは、「ある程度、信頼できる数値」ということが分かります。
WARの問題点
ある程度信頼できる数値であることは、分かったけど
・問題点はないの?
・100%信用していいの?
ここからは、こんな疑問に答えていきます。
実際、問題点もあります。
問題点は3点で、以下のとおりです。
- 打撃面で優れていても、守備が悪いとWARの評価が低くなる
- 投手(特に中継ぎ、抑え)の評価が低い
- 補正数値に課題がある
①全ての数値がよくないと評価されない
打撃が良くても守備や走塁が悪いと、WARの評価が低くなる。
全ての面で高いレベルで優れていないと、いい評価を受けません。
【例】
バレンティンや山川選手は、打撃で物凄い数値をだす反面、守備での数値が悪くWARの評価が低いです。
1芸に優れた選手は、評価されない指標になっています。
チームへの貢献度と考えると、数値と実際の活躍の差を感じます。
②投手(特に中継ぎ、抑え)の評価が低い
投手(特に中継ぎや抑え)が低く評価されることが多く、野手とのバランスがとれていません。
原因は試合登板数が少ないことですが、現代野球において中継ぎや抑えは、重要な役割でもっと評価されてもいいはずです。
2017年のサファテ投手は防御率1.09、54SでWARが3.6というのはあまりにも低すぎます。
投手(特に中継ぎ、抑え)の成績がWARで評価されにくいことは、詳しい人でも意見が分かれるところです。
中継ぎや先発は現代野球では重要な役割を担っています。
詳しくは»現代野球におけるリリーフ投手(中継ぎ、抑え)の役割で解説しているのでよかったらご覧ください。
③補正数値に問題がある
球場やポジションごとに数字を足したり、引いたりしています。
この数字が合っているか、分かりません。
ちまたに出回っている数字は、データ会社が独自に出している数値です。
NPBから、公式データは出ていませんので「100%合っている」と思うのは、危険です。
個人的には「プロ野球を楽しむ一つの要素」と思うくらいでちょうどいいです。
ここからは、WARに関するランキングをみていきましょう。
WARに関するランキング
【最新】WARランキング
現在のWARランキングは、こちらのサイトに詳しくのっています
ここからは昨年(2019)年と歴代のWAR記録を紹介します。
【2020年】WARランキング
セ・パ両リーグ
順位 | 名前 | WAR |
---|---|---|
1 | 柳田悠岐 | 8.4 |
2 | 坂本勇人 | 5.8 |
3 | 浅村栄斗 | 5.7 |
4 | 青木宣親 | 5.4 |
5 | 岡本和真 | 5.4 |
6 | 村上宗隆 | 5.3 |
7 | 近本光司 | 5.2 |
8 | 鈴木誠也 | 5.2 |
9 | 丸佳浩 | 4.9 |
10 | 源田壮亮 | 4.8 |
11 | 梶谷隆之 | 4.8 |
12 | マーティン | 4.1 |
13 | 外崎修汰 | 3.9 |
14 | 近藤健介 | 3.8 |
15 | 吉田正尚 | 3.6 |
16 | 西川遥輝 | 3.6 |
17 | 大山悠輔 | 3.3 |
18 | 菊池涼介 | 3.3 |
19 | 小深田大翔 | 3.2 |
20 | 大島洋平 | 3.1 |
歴代WARランキング
こちらは歴代のシーズンランキングです。
順位 | 名前 | WAR |
---|---|---|
1 | 山田哲人(2015) | 12.9 |
2 | 長嶋茂雄(1961) | 12.8 |
3 | 王貞治(1973) | 12.3 |
4 | 長嶋茂雄(1963) | 11.9 |
9 | 長嶋茂雄(1959) | 11.2 |
ここからは、打率や防御率、勝ち数でシーズンMVPが決まるので、WARとの関連性を調べてみました。
WARの数値と印象の違い
WARが「控え選手に比べて、その選手がどれだけ活躍したか?」を表す指標だといってきましたが、
「数値と印象の違いは?」
「数値が高い選手がMVPに選ばれているの?」
ということで過去6年間のMVP選手と、WARの数値を比べてみたいと思います。
比べる際は「WARの基準」も合わせてみていただくと、分かりやすいです。
パリーグ
年 | 選手名 | チーム | ポジション | 打率or防御率 | 成績 | WAR |
---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 森友哉 | 西武 | 捕手 | .329 | 23本塁打 | 7.8 |
2018 | 山川穂高 | 西武 | 内野手 | .281 | 47本塁打 | 5.4 |
2017 | サファテ | ソフトバンク | 投手 | 1.09 | 2勝2敗54S | 3.6 |
2016 | 大谷翔平 | 日本ハム | 投手 | 1.86(投手成績のみ) | 10勝4敗 | 10.3 |
2015 | 柳田悠岐 | ソフトバンク | 外野手 | .363 | 34本塁打 | 10.5 |
2014 | 金子千尋 | オリックス | 投手 | 1.98 | 16勝5敗 | 7.4 |
セリーグ
年 | 選手名 | チーム | ポジション | 打率or防御率 | 成績 | WAR |
---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 坂本勇人 | 巨人 | 内野手 | .312 | 40本塁打 | 7.2 |
2018 | 丸佳浩 | 広島 | 外野手 | .306 | 39本塁打 | 7.5 |
2017 | 丸佳浩 | 広島 | 外野手 | .308 | 23本塁打 | 9.2 |
2016 | 新井貴浩 | 広島 | 内野手 | .300 | 19本塁打 | 2.7 |
2015 | 山田哲人 | ヤクルト | 内野手 | .329 | 38本塁打 | 12.2 |
2014 | 菅野智之 | 巨人 | 投手 | 2.23 | 12勝5敗 | 5.1 |
MVPとWARの関係をみてみました。
2017年のサファテと2016年の新井は、WARがだいぶ低い結果になっています。
基準でみてもオールスター級からスタメンクラスレベルです。
このようにみると、WARでは抑え投手の評価が低いことと、守備面のマイナスが大きいようです。
イチローのWAR
日本最高のバッターと言われる、イチロー選手のWARです。
1位 9.2 イチロー(2004年/マリナーズ/30歳)
2位 7.7 イチロー(2001年/マリナーズ/27歳)
3位 5.8 イチロー(2007年/マリナーズ/33歳)
4位 5.6 イチロー(2003年/マリナーズ/29歳)
5位 5.4 イチロー(2008年/マリナーズ/34歳)
こんな感じで2004年の成績は凄まじいですが、「全体的には評価が低いのでは」と思ったりします。セイバーメトリクスでは、単打が評価されないことに、関係がありそうです。
「数値では測れないすごさ」があると思っています。
まあ参考程度なのであしからず。
勝手に天才打者のランキングをプロ野球の歴代最高打率TOP10と天才打者ランキングでまとめています。昔の選手を成績とともに振り返っています。
WARを知って野球をもっと楽しもう
WARとはチームの控え選手に比べて、「1年間で何勝分勝ちに貢献したのか」を測る指標です。
セイバーメトリクスの考え方も大切ですが、数字に表れない選手の気持ちや貢献度も大切です。
大きな声やキャプテンシー等はセイバーメトリクスでは、測れません。こういったことも、チームの勝利に貢献しているのではないでしょうか。
したがってセイバーメトリクスで、全てが決まると思ってはいけません。
セイバーメトリクスに注目しつつ、数値に表れない成績に注目してみるのもいいかもしれません。
自分なりの野球の楽しみ方が見つかるといいですよね。
野球ライフの参考になればと思います。
他にもセイバーメトリクスには多くの指標があります。【保存版】セイバーメトリクス指標一覧【基本から分かりやすく解説】で分かりやすくまとめているのでよかったらご覧ください。