バントが意味のない戦術と言われる理由をデータで詳しく解説

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バントが意味のない戦術と言われる理由をデータで詳しく解説

悩んでいる人
  • 科学的に見て犠牲(送り)バントは、意味のある戦術ですか?
  • 「バントが有効な戦術ではない」と聞いたのですが、理由は?

このような疑問を解決します。

記事の内容

  • 犠牲バント(送り)はセイバーメトリクス、科学的に見て有効な戦術なのか
  • なぜバントは、無駄と言われるのか
  • 高校野球や短期決戦で、バントは有効な戦術なのか
  • 犠牲(送り)バントがなくならない理由

以上をそれぞれ解説します。

信頼性向上のため参考にしたURLもはっておきます。
この記事はデータ的な視点から、バントについて解説していきます

関連記事 野球の犠牲バントとは!?野球歴30年の私が誰にでも分かりやすく解説

それでは、本題に入ります。

送りバントは科学的にみて意味がない⁉

送りバントは科学的にみて意味がない⁉

結論 バントは、意味のない戦術です。

統計的に見ると、バントは意味のない戦術で、むしろ得点のチャンスを減らすことになります。

最近はセイバーメトリクスの発達で、統計的にバントが意味のない戦術であることが証明されました。

野球は確率のスポーツですから、過去の結果を見れば、有効な戦術か意味のない戦術か分かります。

しかし場面によって、有効な場面もあります。
なぜこのようになるのか説明します。

本題に入る前に注意点です。

【注意点】
データは、過去の結果・条件から求められた数値です。したがって、現在に適用されるかは、微妙です。例えばボールの反発係数が変わった。日本の気温や湿度が変化したことでボールが飛びにくくなった。新たなデータが出てきた。となればバントが効果的な戦術になる可能性もあります。

実際2021年のメジャーリーグでは、ボールの反発係数が変わりホームランの数が減っています。これが原因か分かりませんが、バントの数が増えています。

このようにデータは、過去の指標を表しているにすぎません。

新しいデータが出て、「バントが有効な戦術になる可能性もある」ということを理解して、本記事を読んでもらえたらと思います。

ちょっと話がそれましたが、本題です。

【得点期待値】バントの得点確率

バントをしたことによって、点が入る確率の変化をみてみます。

「バントをすると何点入ったのか」
「バントをしないと何点入ったのか」

過去のデータから確率が分かりますので、説明します。
得点期待値から説明します。

ランナーやアウトカウントによって、どのくらい平均的に得点が入るかを表した表です。

分かりづらいので、実際の表を見てみましょう
以下は2014年から2018年の得点期待値です。

得点期待値

「無死ランナー無しだと0.4点」「無死一塁だと0.8点」得点が入る見込みがある、といった表です。過去の結果から、算出された数字です。

この表を見ると、バントをすると得点見込みがどのように変化するか分かります。

ノーアウト一塁では.804、1死二塁では.674と得点期待値が変わります。この結果から、バントをすると得点の入る確率が、0.13ほど低くなることが分かります。バントをしないほうが得点が入りやすくなります。

ランナー
アウトカウント
バント前バント後変動
無死1塁0.8040.674-0.130
一死1塁0.5000.317-0.182
無死2塁1.0710.917-0.154
一死2塁0.6740.345-0.330
無死1・2塁1.3861.337-0.049
一死1・2塁0.9040.524-0.379

引用 セイバーメトリクス入門

そして全ての場面で、犠牲バントをすると得点期待値が下がります。

したがって、野球は9イニングで得点を大きくすることが最も大切ですので、得点期待値から見ると、犠牲バントは有効な戦術ではありません。

「バントは有効な戦術ではない」と言いましたが、有効な場面もあります。

【得点確率表】犠牲バントが有効な場面

9回であと1点だけとれば、勝ちが決まるといった場面です。
得点確率表を使って説明します。

ランナーやアウトカウントによって、1点以上入る確率を表した表です。

得点確率表

無死一塁なら約40%の確率で点が入る
無死二塁なら約60%の確率で点が入る

といったことが分かる表です。

無死一塁の40.2%から、犠牲バントをすると1死二塁39.4%になることから、得点の入る確率が下がります。どの場面でも、無死一塁からの送りバントは、少なくとも1点をとる確率も下げることが分かります。

しかし表を見ると、全てのバントが無効であるわけではありません。

ランナー
アウトカウント
バント前バント後変動
無死1塁40.2%39.4%-0.8%
一死1塁26.1%21.6%-4.5%
無死2塁60.3%62.4%2.1%
一死2塁39.4%24.8%-14.6%
無死1・2塁60.7%62.5%1.8%
一死1・2塁41.0%27.1%-13.9%

引用 セイバーメトリクス入門

得点確率表を見ると、バントをして唯一得点確率が上がるのは、ノーアウトでランナーが2塁にいる場合です。確率にすると、2%程度ですが上昇します。

1死3塁となれば、犠牲フライやゴロでも点が入るといったことに関係しているようです。
無死2塁からのバントは有効ですが、1死二塁からのバントは得点確率が下がります。

【損益分岐点】打力が違う場合のバント

得点期待値はあくまでも、平均的な得点見込みを表しています。例えば.804の得点期待としたら、リーグの平均的な打者と投手が対戦した結果になります。

ここで、平均以下の打者がバッターとなった場合、どのような結果になるでしょうか。

損益分岐点から説明します。
ここはちょっと難しいです。

【損益分岐点】
もともとは経済用語でかんたに言うと、打者の打率でバントをした方が得点の確率が上がるのか、下がるのかの境目が損益分岐点です。

投手がバントをするのと、4番バッターがバントをするのは、意味合いが変わってきますよね。「どのレベルの打者に、バントをさせたらいいのか」を見てみましょう。

結論から言うと、全ての打者にバントは、有効な戦術ではありません。

理由は先ほど紹介した得点期待値の「送りバント」と「打った場合」を比べると分かります。

計算は難しいので省略しますが、下記のようになります。

打った場合=得点期待値.798
送りバント=得点期待値.639

打った方が得点期待が上がる(+.159)

セイバーメトリクス入門

またどのくらいの成績の打者ならバントが有効になるかというと

打率は.103以上、出塁率(加重出塁率)は.151以上ある場合は、打たせた方が効果的です。この数値は、野手の数値としてありえないくらい低い数値なので、当てはまる野手はいません。

この結果からすると、全く打てない投手のみバントは有効な戦術と言えそうです。

ちなみにセイバーメトリクス入門という本には、2018年の菊池選手を例に説明していて、打率.233、送りバント30(成功率8割と仮定)でもバントをすると、得点が入る確率が下がります。

計算方法も出ているのですが、難しいのでここでは省略します。詳しくはセイバーメトリクス入門をご覧ください。

高校野球や短期決戦でもバントは効果のない戦術なのか

高校野球や短期決戦でもバントは効果のない戦術なのか

犠牲バントは、効果のない戦術ということが分かりましたが、高校野球や短期決戦のクライマックスシリーズや日本シリーズでも効果のない戦術なのでしょうか?

プロ野球

プロ野球(メジャーリーグ)についてです。

これについては、アストロボールに興味深い内容がのっていました。
アストロボールは、最新のセイバーメトリクスに関する本

セイバーメトリクスは発達したが、ポストシーズンは、違った戦い方がある

引用 アストロボール

このようにのっています。

セイバーメトリクスの数字は、シーズンごと、数年単位の数字が一般的です。したがって短期決戦において、全てセイバーメトリクスの数字を当てはめることは危険です。

実際アストロボールでも、プレーオフは全く違う野球があるとも書かれています。

実際、圧倒的な成績を残してきたチームが、勢いのあるチームにあっけなく負けたというシーンをよく見ると思います。

したがって、プロ野球のシーズンにおいて、バントは有効ではありませんが、短期決戦(日本シリーズやクライマックスシリーズ)は実際のデータがないので、どちらが正しいか今のところ分かりません。

あとは、オリンピックやWBCなどの国際大会についても同じことが言えます。

今回のデータから短期決戦でバントは、不要だという考え方は、危険です。
データがそろってきたら、結論が出そうですね。

高校野球

高校野球については、微妙です。
そもそも選手間の実力差が大きく、1回戦負けのチームと甲子園を目指すチームでは比べることができません。

極端に言えば、甲子園に出るような実力のチームなら送りバントをしても、複数点とることが可能です。

甲子園のデータがあれば面白いですが、今のところそんなデータはないので実際のところ分かりません。

しかし高校野球=負けたら終わり

となるので、究極の短期決戦というこになります。したがって、先ほど紹介したプロ野球の短期決戦に近いイメージになるかと思います。

今のところは、高校野球でも意味のある戦術と言えそうです。

プロ野球でバントがなくならない理由

プロ野球でバントがなくならない理由

ここまでくると、データでわかっているのに、なぜプロ野球でバントがなくならないのでしょうか?

当然ながらこのような疑問が思い浮かびます。
私なりに見解を述べますと、以下です。

長期的な結果と目先の結果の違いです。

多くの人がバント=無難な戦術です。
バントをしておけば見ている人は納得します。
強打者は打つ、打力の落ちる打者はバントといった感じで使い分けると、誰も文句を言いません。

むしろ打力の落ちる打者に打たせて、ゲッツーになったら誰も納得しません。文句すらでます。

このことからバントは効率の悪い作戦ですが、見ている人やフロントを納得させるための戦術といえます。ベストを尽くした攻撃をして、「これで点が入らなかったらしょうがないよね」といったイメージです。

野球は確率のスポーツですが、失敗したくない(最悪の結果を回避したい)という気持ちから、ミスの少ない攻撃をしていこうとなります。実はその結果、勝ちづらくなっているわけですが。

バントは有効な戦術か

犠牲バントについては、ほとんどの場面で有効な戦術ではないことが分かりました。

しかし、バントが100%無駄な戦術かと言われると、そうではありません。打ってくると思った強打者が、バントをすることによって、1塁に出塁する確率も増えます。また守備側がバントを警戒することによって、打った際の安打の確率も増えます。

このようにバントのメリットもあります。

今回の検証で分かったことは、バントが100%意味のない戦術ではありません。
あくまでも野球は人間が行うので、駆け引きの一つとしてバントがあるのかもしれません。

プロ野球でもバントを選択した、裏の理由があるかもしれません。例えば9回裏でクローザーのランナー3塁の失点率が9割などのデータがあったら、1死2塁でも送りバントを選択するかもしれません。

極端ですが、こんな可能性もあるわけです。

いろいろなデータや投手心理もあるので、バントは野球を楽しむ一つの要素と言えそうです。

セイバーメトリクス的にバントは不要
確実に1点とるためにバントは必要

といった0-100の考え方ではなく、いろいろな場面や見方があるということを分かっていただけたらと思います。

野球ライフの参考になればと思います。
以上で終わります。

セイバーメトリクスについては【保存版】セイバーメトリクス指標一覧【基本から分かりやすく解説】でまとめているので、よかったらご覧ください。

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