本記事で分かること
- 犠牲バントの意味や効果・目的・行う理由
- 犠牲バントの歴史
- 犠牲バントの歴代記録
- スクイズと犠牲バントの違い
- 犠牲バントと打数・打席数・出塁率・エラー・成功率・安打・ランナーが複数いる場合・失敗した場合のスコアの考え方
本記事を読めば、犠牲バントのルールや意味・記録(スコア)の考え方など網羅的に知ることができます。
難しい犠牲バントの考え方について、例題を使って分かりやすく解説するので、ぜひチェックしてみてください。
それでは、本題に入ります。
犠牲バントとは
プロ野球のルールブック(公認野球規則)には、以下のように記載されています。
0アウトまたは1アウトで、打者のバントで1人または数人の走者が進塁し、打者は一塁でアウトになるか、または失策がなければ一塁でアウトになったと思われる場合は、犠牲バントを記録する
公認野球規則9.08
このように記載されています。
ちょっと分かりづらいですが、打者はアウトになりランナーが進塁したら犠牲バントとなります。
英語
英語では、Sacrifice buntと呼ばれます。
sacrifice=犠牲
bunt=バント
英語の直訳通りで「犠牲バント」と呼ばれます。
別名
またランナーを次の塁に送ることから、「送りバント」とも呼ばれます。
意味・目的・効果・理由・役割
ざっくり犠牲バントをする理由は、得点を増やすためです。
1塁にランナーがいるより、2塁や3塁にランナーがいた方が得点が入りやすくなります。たっけー
これは、ホームに近い塁にランナーがいるので当たり前ですよね。
またランナー1塁でバッターが打った場合、ゲッツー(ダブルプレー)の可能性もあります。
したがって、確実に次の塁にランナーを進めるために犠牲バントを行います。
ちなみにバントが成功する確率は、8割程度と言われています。
バッターの出塁率が3割程度と考えると、失敗の少ない戦術と言えます。
ただし現代野球では、実はアウトカウントが増えてランナーが進んでも意味がないと言われるようになっています。
詳しい理由については、以下の記事で解説しています。
スクイズと犠牲バントの違い
スクイズと犠牲バントの違いは、3塁ランナーの有無です。
1塁・2塁ランナーを次の塁に進めるバントを犠牲バント。
3塁ランナーをホームに返すバントをスクイズといいます。
スクイズは、直接得点を取るバントということになります。
歴史
犠牲バントの歴史は、Wikipediaに以下のような記載がありました。
歴史は古く、1860年代にブルックリン・アトランティックスの中心選手として活躍していたディッキー・ピアス(英語版)が最初に犠牲バントを行っていたとされている。
メジャーリーグで行われ、日本に広まってきたようです。
自己犠牲の精神が美徳とされる日本の野球において、これほど理にかなった戦術はないかもしれません。
歴代世界記録
順位 | 選手名 | 犠打 |
---|---|---|
1位 | 川相昌弘 | 533 |
2位 | 平野謙 | 431 |
3位 | 宮本慎也 | 408 |
4位 | 今宮健太 | 327 |
5位 | 伊藤勤 | 305 |
日本で1番犠打を成功させたのは、川相昌弘の533個(世界1位)です。
ランキングを見ると、アベレージヒッターやキャッチャーの犠打数が多くなっています。
また現役選手である今宮健太、菊池涼介の犠打数がどこまで伸びるか楽しみですね。
やり方
基本、ランナー1塁の場合は、1塁側、ランナー2塁の場合は3塁側にボールを転がします。
犠牲バントの場合は、ピッチャーが投げる前から「バントの構え」をするのが一般的です。
守備側の選手は、バントに備えて前寄りに守り、バントを成功させないようにします。
技術的な話をすると、「打つ」と「バント」では全く違う技術が必要で、バントのみの代打選手もいます。
犠牲バントの具体的な例は、後ほど説明します。
スリーバント失敗
普段のバッティングはファールボール=ストライクとなります。
2ストライク後はカウントされず打ち直しが可能です。
しかしバントの場合は特別なルールで、2ストライク後のファールボールは、三振となりバッターアウトとなります。
リスクの少ない作戦とみられますが、うまく決まらなければかんたんにアウトになる戦術と言えます。
成功率
犠牲バントの成功率は、少し古いデータですが、72%~81%というデータがあります。
プロ野球選手の送りバントは、7割から8割成功することを意味しています。
しかし、投手も含まれているとはいえ3割近く失敗すると考えると、どうなんでしょう?
得点との関連性やバントに関するデータはバントが意味のない戦術と言われる理由をデータで詳しく解説でまとめいてます。
犠牲バントのスコアの考え方
ここからは、犠牲バントについてプレーの場面やルールブックの解釈について分かりやすく解説します。
ルールブックの解釈
ここは、ちょっと難しいです。
【ルールブックの解釈】
ランナーが1塁にいる場面、明らかにセーフティーバントと分かるバントをし、結果、バッターはアウト。ランナーは進塁しても記録は、内野ゴロになります。
しかし打者の行ったバントをみて、「絶対にセーフティーバントだ!」と分からなければ、公式記録員の判断で犠打になります。
【ポイント】
・バント・エラー・ヒットに関する全てのプレーが公式記録員の判断。
・犠牲バントかセーフティーバントか分からない時は、打者に有利な記録がつく。
ここは難しいので基本的に
バントをする
↓
走者は進塁
打者はアウト
この場合は犠牲バント
バントをする
↓
走者は進塁
打者もセーフ
この場合は守備側のミスがなければ安打
このように覚えればOKです。
スクイズ・打点
犠牲バント・犠牲フライ(犠打)で点数が入った場合、打点になります。
また、守備側の選手にエラーやFC(野手選択)があっても、公式記録員が犠打と認めると、打点が記録されます。
つまり、スクイズが成功するとバッターに打点が記録されます。
打席数
犠牲バントを行った場合、打席数にカウントされます。
打数と打席数を勘違いしやすいので、注意しましょう。
打席数は、バッターボックスに立った回数のことです。
したがって、犠牲バントをすると打席数が増えます。
打数
犠牲バントが成功した場合、打数にカウントされません。
これは、もともとアウトになるつもりで、バントを行ったと考えるからです。
また犠牲バントが失敗した場合は、打数に含まれます。
犠牲バントという任務を失敗して、アウトカウントが増えたからと考えるからです。
ヒット(安打)
送りバントが内安打になった場合、犠打にはなりません。
送りバントが結果的にヒット(安打)になった場合、安打が記録され犠打は記録されません。
【例】
①ノーアウトランナー1塁。
②バッターはバントをし、ピッチャー手前へゴロ打球
③投手は迷わずファーストに送球
④しかしバッターの足が早くセーフで1塁出塁。1塁ランナーも2塁へ進塁
エラーや野手選択(FC)がなくバッターが出塁したら、バントヒット(打数1、出塁1)の記録がつきます
打率
犠打は打率に反映されません。
打席数は増えますが、打数が増えないため打率の増減はありません。
出塁率
犠牲バントで出塁率は、下がりません。
しかし犠飛(犠牲フライ)の場合、出塁率に影響があり、下がります。
ややこしいのですが、「バント=出塁率に影響がない」と覚えておきましょう。
失敗
犠牲バントを失敗した場合、凡退したことと同じ意味になります。
犠牲バントという任務に失敗して、アウトカウントが増えたからと考えるからです。
つまり、バッターの打率は下がります。
エラー
バッターが犠牲バントをして、守備側の選手がエラーをした場合を考えます。
公式記録員がエラーしなくてもバントが成功したと考えれば、犠打+エラーが記録されます。
例題で解説します。
【例】
①ノーアウトランナー1塁
②バッターはバントをし、ピッチャ前へゴロ打球
③投手がそのボールをエラーし送球できず
④バッターは出塁し、ランナーは2塁へ
エラーがなくても走者が進塁できたと記録員が判断したら、犠牲バント+エラーの記録がつきます。
逆に明らかな失敗バントの場合、エラーのみが記録されることもあります。
野手選択(フィルダースチョイス)
バントをしたバッターをアウトにできるにもかかわらず、守備側がランナーをアウトにしようと試みて失敗し、誰もアウトにならなかった場合には、犠牲バントと野手選択(FC)が記録されます。
分かりづらいので、例題です。
【例】
①ノーアウトランナー1塁
②バッターはバントをし、ピッチャー前へゴロ打球
③投手はセカンドに送球したが、1塁ランナーの足が速くセーフ
④バッターも1塁出塁
一塁に投げたらアウトになったと記録員が判定したら、犠牲バント+野手選択(FC)がつきます。
ランナーが複数いる場合
ランナーが一人以上いる場合、進塁するランナーが一人だけであっても犠牲バントになります。
【例】
ランナー 一・三塁でバント
↓
三塁ランナーは動かず、一塁ランナーが二塁に進塁
この場合でも犠牲バントになります。
進塁できるランナーを進塁させると、犠牲バントになります。
【例】
ランナー 一・ニ塁でバント
↓
三塁はセーフ
二塁はアウト
バッターはアウト
この場合は犠牲バントにはなりません。
進める走者が全て進塁しないと、犠牲バントになりません。
犠牲バントのまとめ
犠牲バントは、セイバーメトリクスの進化により、意味がないと言われる時代になりました。
実際MLBでのバント数は、かなりの減少傾向にあります。
今後日本のプロ野球でも、減っていくのでしょうか。
バントは日本人の伝統芸能のような気もするので、個人的には残ってほしいなと思います。
時代は回ると言うので、何十年後には再評価される時代が来るかもしれません。
今後のバントはどうなっていくのかに注目しつつ、プロ野球を楽しんでいきましょう。
セイバーメトリクスについては【保存版】セイバーメトリクス指標一覧【基本から分かりやすく解説】でまとめているので見ると、野球観戦がより楽しくなりますよ!