- キューバの野球が強い理由が知りたい
- キューバ選手はなぜ亡命をするの?
- キューバ選手の給料はどのくらい?
- キューバ選手は公務員なの?
- キューバ出身の有名選手が知りたい
このような疑問を解決します。
本記事を読めば、キューバ野球が強い理由、亡命する理由、給料、公務員の有無、キューバ出身の有名選手などキューバ野球について網羅的に分かります。
野球強豪国の一つ、キューバについて深堀した記事となっています。「キューバ 亡命 なぜ?」とモヤモヤしてい方もスッキリするはずですよ!
それでは、本題に入ります。
キューバの野球はなぜ強いのか
キューバが強い理由の一つに社会主義国家であり、国家を上げて野球を運営・管理しています。
国内最高峰リーグであるセリエを頂点としたシステムになっていて、地域コミュニティー、職場、学校、軍などのチームで頭角を現すと、その選手は州チームの予備軍に昇格。
ここで実力が認められると、セリエ球団に入団し、2軍で鍛えられ1軍デビューとなります。
アスリートの育成は国家の元1本化、されています。
また素質を見込まれた選手は、小学生段階からエイデと呼ばれるスポーツ学校で専門的な教育を受けます。
ここで徹底的に鍛えられ、優秀な選手となります。
これは、野球に限ったことではなく、陸上やバレーボールなども同様に行われます。
また各スポーツの指導者も専門教育を受けた者でなければ、指導を行うことができないので、日本の部活などとは大きく異なります。
このように国家を上げて、時間とお金を使って組織的に野球を強化しています。
キューバに野球が広まった理由
キューバで野球が発展した理由には諸説あるが、キューバがスペイン領だった1864年とされています。
この時代にアメリカに留学していたネミオンとエルネストのギロ兄弟が、道具とルールを携えて帰国したのがキューバでの野球の始まりとされています。
同時期にアメリカの貨物船の乗組員も野球を持ち込んでいるようです。
また、野球は攻撃中に日陰で休むことができる団体スポーツで、暑い日差しをよけるため急速に人気を高めていったようです。
地域や環境的な要因もあるようです。
キューバが弱くなった理由
キューバは野球強豪国の一つつして位置づけられますが、近年はWBC、オリンピックなどの国際大会では勝てなくなっています。
この理由ですが、そもそも以前はプロ野球選手(トッププロ)が参加できる大会はありませんでした。
したがって、キューバのようなプロが存在せず優秀な選手が多い国が好成績を収めていました。
他国のプロ選手が参加できないというのが、キューバが強い理由の一つでした。
しかし、近年のWBCやオリンピックではプロ選手の参加が可能となり、メジャーリーガー(オリンピックを除く)やプロ選手をそろえた国が好成績を残すようになりました。
またキューバでは亡命選手が後を絶たず、国内リーグのレベルが下がってきています。
キューバの場合、亡命したMLB選手を代表として招集することができないので、結果として代表のレベルが下がり国際大会では勝てなくなっています。
仮に亡命ではなく、移籍という形になれば国際大会でも、強さが戻ってくるかもしれません。
ちなみに2018年末には、メジャーリーグとの間に選手派遣協定が結ばれましたが、19年4月になってトランプ政権がこれを無効としました。
そのため、キューバ人選手がアメリカでプレーするためには、亡命という手段しかない状況が2022年も続いています。
キューバの野球選手はなぜ亡命するのか【歴史も解説】
まず「亡命とは?」です。
亡命とは政治的な理由により、他国に逃れることを意味します。
理由としては、政治的な迫害・弾圧に対するものや宗教的な対立、民族紛争によることが多いとされています。
キューバの野球選手の場合、一般的に亡命すると、キューバ国籍でなくなりアメリカやドミニカなどの国籍になるようです。
亡命の手段・方法
選手は、亡命エージェントの手引きでボートや高速艇に乗ってキューバを脱出します。
最近は、どうか分かりませんが、昔はいかだで亡命する選手もいたようです。
選手だけで亡命するのは難しく、専門のエージェントがいるようです。
また代表の遠征先で米国大使館に駆け込んで、MLBへの入団を手にしてきました。
近年は亡命選手の再入国に関しては緩和され、一定条件を満たして8年以上経過した選手は、帰国を許されるようになっています。
ちなみに2019年には亡命していたベタンコート、アルエバエルナもキューバのトップリーグであるセリエに帰ってきています。
亡命する理由
キューバ選手が亡命する理由は、お金です。
キューバは社会主義国家であるため、トップリーグのセリエの選手ですら月給4,000円ほどと言われています。
※世界の野球事情より引用
ちなみに野球のチケット代が4円。
例えば、2014年に亡命した主砲のホセ・アブレイユは6年6,800ドル(当時のレートで約69億)でシカゴ・ホワイトソックスと契約しています。
つまり、亡命するリスクをとっても将来を有望視される選手であれば、多額の現金を受け取ることができます。
キューバに残っていたら、毎月4,000円しかもらえないのでリスクを冒すのは当然ですよね。
亡命に失敗した場合
亡命に失敗すると、まずは死ぬ可能性があります。
これは、当たり前ですが、ボートなどで100km以上暗い海を航行しなければいけないので、一歩間違えると死ぬこともあります。
実際の刑罰については、調べても出てきませんでした。
北朝鮮であれば、最悪死刑。
キューバの場合でも何らかの罰があり、監視も厳しくなるのは間違いないでしょう。
ちなみに、2012年にメキシコに亡命しドジャースと契約したヤシエル・プイグは、5回亡命に失敗しています。
5回も亡命するチャンスがあったと考えると、死刑などの刑罰はなさそうです。
ちなみに2011年のワールドポート・トーナメントに出場した際の亡命により、2011-12シーズンはプレーできませんでした。
それでも亡命するのは、多額のお金を手に入れることができるからでしょう。
日本のキューバ選手
日本に来ているキューバ人選手は、2つのパターンがあります。
- 亡命してMLB経由で入団している選手
- キューバ政府を通しての正規入団選手
亡命してMLB経由で入団している選手
先ほどから説明しているとおり、亡命してNPBに在籍しているキューバ選手がいます。
最近で言うと、ビシエドやマーティン、エチェバリアなどがこれにあたります。
特徴としては、MLBで活躍または活躍できず、日本球界に職を求めてきた選手たちです。
高齢でピークを過ぎた選手が多い印象です。
キューバ政府を通しての正規入団選手
こちらは、キューバ政府をとおして正規のルートで入団しています。
最近で言うと、デスパイネ、モイネロ、グラシアル、グリエル(後に亡命)などがこれにあたります。
近年はこちらの選手が増えてきています。
キューバ政府が仲介者となることで、セリエでの所属はそのままに、選手と契約することができます。
どういうことかと言うと、日本のシーズン中(3月~10月)は、日本でプレー。シーズン終了後はキューバのシーズン(10月~4月)でプレーします。
例えば、デスパイネの場合、日本のシーズンを戦った後、キューバに帰国するとそのままキューバの国内リーグに参加して、日本に戻ってくるということになります。
話がそれましたが、正規ルートでの入団であれば、選手が契約した契約金から仲介手数料を政府が受け取ることができます。
選手は亡命というリスクを冒すことなく、プロ選手としての力量に見合った報酬を受け取ることができます。
政府も手数料を得ることができるので、Win-Winの関係になっています。
とは言え、日本での契約金は多くても1億程度です。
年俸もデスパイネクラスで4億(推測)です。
ちなみに、デスパイネは2023年WBCキューバ代表の主将を務め、その後ソフトバンクと再契約しています!
(出典:NHK Sports デスパイネ ソフトバンクと再契約で入団会見「日本一目指す」)
若いトップ選手であれば、多額の報酬が手に入る亡命を選択するのもうなずけます。
公務員
キューバのトップリーグであるセリエの選手は、全員国家公務員です。
プレー自体に報酬はなく、各チームに所属して給料という形で収入を得ています。
これは、社会主義国家独特な報酬体系と言えそうです。
給料(年俸)
給料はトップリーグのセリエでも、月給2,000~4,000円程度と言われています。
ただし、給料が低くても「配給制度」というものがあり、最低限の生活保障はされています。
しかし、供給量が少なく、配給が滞っている箇所もあるようです。
社会主義と言っても貧しい国であり、野球の才能がある選手はより高いお金をもらえる他国に移籍したいのは必然でしょう。
キューバの野球選手一覧
キューバの野球選手で有名な選手を現在と過去、国内リーグ、MLB在籍選手、日本でプレーした選手に分けて解説します。
国内の有名選手(英雄)
野球強豪国だけあって、多くの選手がいます。
ここでは、筆者の印象を元に国際大会で活躍した伝説的な選手を紹介します。
- オマール・リナレス
- オレステス・キンデラン
- アントニオ・パチェコ
- フレデリック・セペダ
- ホセ・コントレラス
- アルフレッド・デスパイネ
- ユリスキエル・グリエル
キューバの英雄的な選手と言えば、まずはオマール・リナレスでしょう。
バルセロナ・アトランタオリンピックでの金メダル、世界選手権4連覇などキューバが最も輝いていた時代の主力選手です。
引退後に中日に入団したのは、驚きました。
活躍はできませんでしたが・・・。
現在は、中日の巡回コーチとして活動していて、キューバ選手の発掘も行っているようです。
またこの時代の選手と言えば、キンデランとパチェコも忘れられません。
社会人野球のシダックスに入団したのは、奇跡と言えるかもしれません。
総じて言えるのは、1990~2000代のキューバが、オリンピックなどの国際大会で無類の強さを発揮していた時期の選手です。
他にもセペダ、グリエル、デスパイネなどは日本球界でもプレー経験があります。
日本にいたので目新しさはありませんが、国際的な知名度や実績を考えるととんでもないスター選手です。
グリエルやセペダなんかは、キューバの至宝と言われたりもしています。
MLBの有名選手
- アロルディス・チャップマン
- ホセ・コントレラス
- ユリエスキ・グリエル
- ルルデス・グリエル
- ヨエニス・セスペデス
- ユニスキー・ベタンコート
- ホセ・カンセコ
- ホセ・アブレイユ
- ホセ・フェルナンデス
- ホセ・イグレシアス
- ライセル・イグレシアス
- ヤズマニ・グランダル
- ヤシエル・プイグ
- ヨンダ―・アロンソ
- ヨルダン・アルバレス
- ヨアン・モンカダ
- カルロス・ソレア
- ランディ・アロサレーナ
- エリスベル・アルバエルナ
- etc
キューバ出身でMLBで最も成功した選手の一人がホセ・カンセコです。
通算安打数1877、462本塁打を記録しています。
ステロイドやお騒がせ発言、スキャンダルなどさまざまなことで世間を賑わせた選手でした。
現役のメジャーリーグで断トツの成績を残しているのは、ホセ・アブレイユ(シカゴ・ホワイトソックス)とアロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)でしょう。
アブレイユは、MLB通算で1,262安打。
2021年も現役でプレーしています。
チャップマンは、MLB通算セーブ数306。
2021年も現役。
セーブ数よりも、球速が100マイルを超えることの方が有名ですね。
これに続くのがNPBの横浜ベイスターズでもプレー経験のあるグリエルでしょう。
MLBに入団するのが遅かったためMLB通算734安打(2021終了時)ですが、もっと早く海を渡っていれば、2000本も狙えたのではないでしょうか。
最近では2020年のアメリカンリーグ新人王アルバレス(ヒューストン・アストロズ)、ポストシーズンの新人本塁打記録を更新したアロサレーナ(タンパベイ・レイズ)などは注目しておいて間違いと思います。
日本に在籍した有名選手
- ロベルト・バルボン(1955~65:阪急・近鉄)
- オレステス・デストラーデ(1989~92:西武)
- オマール・リナレス(1989~92:中日)
- アルフレッド・デスパイネ(2014~:ロッテ・ソフトバンク)
- レオネス・マーティン(2019~:ロッテ)
- ジュリアス・グラシアル(2018~:ソフトバンク)
- アレックス・ゲレーロ(2017~19:巨人・中日)
- ダヤン・ビシエド(2016~:中日)
- フレデリック・セペダ(2014~15:巨人)
- リバン・モイネロ(2017~:ソフトバンク)
- ライデル・マルティネス(2017~:中日)
- ラウル・バルデス(2015~17:中日)
- ヨスラン・エレラ(2015~16:横浜)
- オネルキ・ガルシア(2018~20:中日・阪神)
- アリエル・ミランダ(2018~19:ソフトバンク)
- アデイニー・エチェバリア(2021~:ロッテ)
- ランヘル・ラベロ(2021~:オリックス)
- オレステス・キンデラン(2003~04:シダックス)
- アントニオ・パチェコ(2003~04:シダックス)
近年は、多くのキューバ人選手がNPBに参加しています。
特にモイネロやビシエドの活躍は、記憶に新しいところではないでしょうか。
また、O・ガルシアやマーティン、エチェバリア、ビシエドのように亡命してMLB経由で日本にきている選手もいます。
若い選手は、亡命ではなくキューバ政府と合意後、派遣という形で入団していると思われます。
珍しいところでは、キンデランやパチェコといった当時のキューバのスーパースターが社会人野球のシダックスに入団しています。
ピークを過ぎた年齢でしたが、都市対抗野球では圧倒的な成績を残して印象に残るキューバ人です。
キューバ野球の過去の成績・レベル・ランキング
キューバの過去の成績・レベル・ランキングも振り返ります。
レベルについては、冒頭から説明してきたので、そちらを参照ください。
世界ランキングや過去の成績を振り返ります。
ランキング
世界ランキングはWBSCの公式サイトで確認できます。
ちなみに2023年8月の情報ですと、日本が1位、キューバは8位となっています。
WBC
- 2006年:準優勝
- 2009年:2次ラウンド敗退
- 2013年:2次ラウンド敗退
- 2017年:2次ラウンド敗退
- 2023年:ベスト4
第1回WBCこそ準優勝ですが、2017年までは決勝ラウンドに進むことなく敗退しています。
やはりメジャーリーガーを招集できないことが、成績の不振につながっていたようです。
日本が優勝を飾った2023年のWBCでは、準決勝でアメリカに大敗したものの、久しぶりの決勝ラウンド進出となりました。
オリンピック
- 1992年:優勝
- 1996年:優勝
- 2000年:準優勝
- 2004年:優勝
- 2008年:準優勝
- 2021年:アメリカ予選敗退
直近の東京オリンピックは予選で敗退しましたが、以前の公式競技として採用された全ての大会で優勝ないし、準優勝しています。
WBSCプレミア12
- 2015年:6位
- 2019年10位
ワールドカップ
- 出場35回
- 優勝25回
インターコンチネンタルカップ
- 出場13回
- 優勝11回
【まとめ】キューバの野球はなぜ強いのか?亡命や公務員制度についても解説
キューバの野球について網羅的に解説しました。
キューバについては、アメリカとの政治関係で今後の強さが変わってくるでしょう。
代表にMLBのスーパースターが加わるようなことがあれば、間違いなくドミニカやプエルトリコ、アメリカに匹敵するような国です。
とは言え、現状の制度では国際大会で優勝できるような戦力ではないでしょう。
国際大会を見る際は、本記事を参考にしてみてください。
それでは。
【合わせて読みたい記事】
ドミニカの野球が強いのはなぜ?ランキングやアカデミーを紹介しながら解説
ベネズエラで野球が盛んなのはなぜ?強さの理由や選手・歴史についても解説